「好き・・・嫌い・・・好き・・・。」
そう呟きながら、私は花びらをひとつずつ散らせていった。
「嫌い・・・。」
ぷちん、と切って、はらりと落とすと、今のでちょうど半分がなくなった。
散歩の途中に見つけた白い名前も分からない花を見て、何となく始めた花占い。
形ばかりで、何の意味もなかったはずが、なぜだろう、今はすごく緊張する。
「好き・・・・・・嫌い・・・・・・・・・好き・・・・・・。」
少しずつ、花びらをつまむ手が遅くなっていくのが分かる。
だって、どんどん先が見えてきてしまうから。
最後がどっちか、一目で分かってしまうから。
震える手で、最後の花びらをつまんだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・きらい・・・。」
はらっと手から花びらが宙に舞った。
風に乗って白い花は舞い上がり、曇天の空に紛れていった。
それを、目を細めて見送る。
「・・・・・・・・・あーあ、“嫌い”・・・かぁ・・・。」
はポツリと呟いて、ため息とも取れる息をついた。
残った茎と真ん中の部分をじっと見つめていると、黒いコートが目の端に映った。
「何が嫌いなんですか?」
そちらをちらりと見ると、そこには任務帰りなのか、少し汚れてしまったコートをまとうアレン。
怪我をしたのか、ただ単に破れたのか、二の腕あたりが破けている。
でもその顔には、笑み。
「・・・さぁ?」
少し首を傾けて聞かれた言葉に、私は少し意地悪に笑って返す。
その答えにアレンは一瞬きょとんとして、それから困ったように笑った。
「内緒ですか?」
「そう。内緒。」
そう私が笑って返すと、アレンは少しだけ寂しそうな顔をした。
ちょっと意地悪が過ぎてしまっただろうか。
「寂しい?」
「とても。」
思いのほかきっぱりと返された言葉に、私は目を丸くする。
それから、何となくくすぐったくて嬉しくて、くすくすと笑う。
そんな私の反応にすねたように、「何が可笑しいんですか」と呟いてそっぽを向いてしまった。
彼の頬が少しだけ赤く見えるのは、きっと気のせいじゃない。はず。
「私がアレンを好きかどうか。」
「え?」
「花占いで占ってたもの。」
そう言って笑うと、アレンは少しうつむき気味でなにやら考え込んでいた。
「・・・当たりました?」
「・・・私の花占いは、外れた事はないのよ。」
その答えに、彼はショックを受けたように固まった。
その様子を見ながら、私はゆっくりと近づいていった。
下から覗き込むと、泣きそうな顔をしたアレン。
うーむ、やりすぎてしまったかもしれない。
私はそうひとりごちると、彼の瞳と目を合わせて、安心させるようににっこりと微笑んだ。
「まだ、終わってないけど、ね。」
「え・・・。」
驚いたようにアレンが顔を上げると同時に、私はくるりと後ろを向いた。
大きく振りかぶって、手に残った茎を投げる。
「―――好き!」
それはダーツの矢のように、綺麗な放物線を描いて、木々の間に消えていった。
それを見届けると、くるりと彼のほうを向いた。
「・・・ね?私の花占いは、外れたことがないのよ。」
「・・・。」
驚きのあまり目をぱちくりとさせるアレンに、私はにっこりと笑って、言った。
「大好きよ。」
***
花占いは、花びらだけとは限りません♪
花の全てを使って占うからこそ、“花”占い(屁理屈・・・!)
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