さーて、今日のご飯はなんにしようかな〜とのん気に歩いていたのがいけなかったのかもしれない。
否、よかったのかもしれない。

どうなんだろう、自分でもよく分からない。

恋って分からないことだらけ。
もう、どうすればいいの?





grope my feelings





だだだだだ・・・と本来は静かな教団内に地響きのような音が鳴り響く。
しかし、動揺している人は見受けられない。
またか・・・とため息をついて被害に合わないように(=巻き込まれないように)ささっと端に避けるだけだ。
そうして自然と出来た道を、ぎゃーぎゃーと言い合いながら2人の人影が走り抜けて行く。
ものすごい勢いのそれを見送り、彼らは安堵だか呆れだか判断のつかないため息を漏らした。





だだだだだ・・・と地響きが聴こえる。
は瞬時に思いついた人物たちを思い浮かべ、その場にカキーンと固まった。
これは、もしかするともしかするのだろうか。
そんなことを思っている間にも、だんだんと音は近づいてくる。
地響きに混じって人の声。
それが誰かなんて、一瞬で分かる。
一瞬跳ねた心臓に気を取られ、逃げるのが遅れた。


「お、発見。」


すぐ前の角から勢いよく曲がり、の姿を確認してそうのん気に声をかけてきたのは、地響きの主、ラビだった。
姿を見たとたん、また一瞬だけ心臓が音を立ててはねる。
が、それを自覚するより早く、腕を強い力で引っ張られた。


「ちょっ・・・ラビ!?」

「ちょっと付き合うさー。」


何でー!?という悲鳴にも似た抵抗は、あっという間に地響きとともに遠ざかった。





***





「信っじらんない!!」


上がりきった息を整えながら、は「逃げ切ったさ!」と満足そうに額の汗をぬぐっている男を睨んだ。


「なんで毎度毎度あんたたちのくだらない鬼ごっこに巻き込まれなきゃならないのよ!」

「そんなつれないこと言うなって。オレとの仲だろー?」

「どんな仲よ!?」


まったく、折角ご飯食べに行く途中だったのに!!とすたすたと歩き出したの顔を、ひょいっとラビが覗きこんできた。
それだけなのに、またの心臓は大きく脈打つ。


「じゃ、どんな仲ならよかった?」


にっと笑う彼に一瞬ひるみ、無意識に顔が赤くなるのを怒りのせいにして、きっと睨んだ。


「知らない!!」


そう言って荒々しく歩いていくを見送り、ラビは必死に笑いをこらえていた。





***





「もーいやー!!なんなのこのときめき!!どうしてあんなやつのせいで顔赤くしたりドキドキしなきゃならないの!?あぁぁ自分の無意識が恨めしい。そしてその無意識に逆らえない自分も恨めしくてたまんないわ!!」

さん・・・とりあえず、落ち着いて?」

「これが落ち着いていられますか!?」


ラビを置いて食堂に着た私は、ちょうどいたアレン君に心にたまった物をぶちまけてみた。
アレン君は優しい。どっかの迷惑男と違って優しいし、紳士だし、可愛い。
アレン君を好きだったら、どんなに楽だったことか。
でも、その意思に反して私の目が追うのは、心臓が跳ねるのは、不本意だがあのオレンジ頭のいたずらっ子で。
それを自覚しているだけに、よけいあの態度が腹立たしい。

あの人を食ったような飄々とした態度。
あの態度にいつだって私のペースは狂わされっぱなし。
そんなこと、ほんとは嫌なはずなのに。
どうしてか、彼に狂わされるのはイヤじゃない。むしろ、思わず笑みが浮かぶほど楽しい。


「でもそれが同時にどうしようもなくむかつくのよーーー!!」


ご飯そっちのけで時折叫びつつ愚痴る私を、アレン君は苦笑しながら「まあまあ」と諌めてくれる。
あぁ、やっぱりアレン君は私の心の癒しね。
あらかた叫び終わって、ふぅと息をついた私に、デザートを食べ終わったアレン君がにっこりと微笑む。


「でも、さんは好きなんでしょう?ラビのこと。」

「う゛・・・。」


にこにこと笑いながらアレン君がそう質問を投げかける。
いきなりきた直球ストレート。
思わずひるんでしまう。
はぐらかすことも出来たけど、アレン君にはそんなことしちゃいけない気がした。
彼はいつだって私の愚痴を親身になって聞いてくれる。
そんな彼に、恩を仇で返すような行為はしたくなかった。


「・・・好き・・・だよ?」


赤くなりながらぼそぼそと答えた私に、アレン君の笑顔が深まった。


「ですって。よかったですねーラビ?」

「いやーやっぱり?実はそうじゃないかと思ってたんさー。」

「・・・・・・・・・・・・・は?」


後ろのほうから聞こえた声に、一瞬頭がショートする。
こんなときでも跳ねる心臓を敏感なんだか図太いんだか評価に迷いつつ、そろそろと上を向いた。
そこには、にこにこと満面の笑みを浮かべたラビの姿。


「な・・・なんでここに・・・?」

「そりゃ、に会いついでにご飯食べに来たに決まってるさー。」


にこにこと笑いながら答える彼をいつもの反射条件で張り飛ばしてから、くるりとアレン君に向き直った。


「まさか・・・謀ったの?」

「偶然ですよ。」


そんな器用こと出来るわけないじゃないですか。といつもの笑顔で笑って見せるアレン君。
しかし、今の私にあ、可愛いvvとか思う余裕はない。
こ、心のオアシスが・・・私の癒しが・・・!
(し、信じてたのに・・・!)
私はよろよろと後ずさり、くるりと後ろを向いた。


「あんたたちなんて・・・大っ嫌いよーーーーー!!!」


そういい残すと、自分の部屋にわき目も振らず走った。
今更赤くなってくる顔を必死に否定しながら、部屋に駆け込む。
そのまま、ベッドにダイビングした。

混乱の極みにある脳を必死に働かせながら、これからのことを考える。
なんせ謀られたとはいえ、自分は告白をしてしまったのだ。(しかもそのあと張り飛ばしてしまったのだ)
カムバックした光景に、は頭を抱えた。

明日からどんな顔して会えばいいの?
あぁもう誰か、どうにかしてーーーー!!!










***
ごめんなさい(土下座)
一応片思い要素が入ってるけど、なんかそれっぽくないね、この雰囲気。

補足説明
ラビを追いかけてたのは、いたずらをされたブックマンです。そしてこれは日常茶飯事(勝手に決定)
アレンとラビは、前回の任務のとき協定を結んでます仲良しなんです。

碧ちゃん、こんなでよければどーぞお持ち帰りください・・・!


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