進まない・・
書きなぐっていた手を休め、エドは深くため息をついた。
あと1つ、何かが足りないんだ。
何か、何かが。
そう思っているのに、その何かが見つからない。
妙にむしゃくしゃして、エドは乱暴に頭をかいた。
分かりそうで分からない答えに、いらいらする。
そのとき
こんこん
「誰だ?」
こんな時間に、とエドは時計を見た。
もう夜中は過ぎ、深夜と言うべき時刻。
誰もがとっくに寝静まってる時間だ。
「やっぱり起きてた。」
そう呆れた声とともにはいってきたのは、だった。
「お前・・・まだ起きてたのか?」
「それはこっちの台詞よ。明かりがついてるからまさかと思えば・・・はい、これ。」
驚いたように目を丸くするエドにため息交じりの答えを返してから、手に持っていたカップを机にことんと置く。
漂ってくる香りからして、コーヒーだ。
自分に、とわざわざ作ってくれたのだろう。
「・・・さんきゅ。」
呆れながらも見せてくれる気遣いと優しさが、エドの顔をほころばせた。
さっきまであった眉間のしわも、今では見る影もない。
一口飲んで、ふうとため息をついたエドを、は心配そうに見つめた。
「・・・まだ終わらないの?」
「ん?・・・あぁ。何かが足りないような気がするんだけど、それがなぁ・・・。」
「見つからないわけか。」
「おう。」
ふーん。と言いながら書きなぐられた紙を不思議そうに見た。
解読しようとしているのか、は可愛い顔を気難しげにゆがめる。
それを、エドはコーヒーをすすりながら見ていた。
彼女と出会ったのは、もう結構前のことで。
そして旅の仲間の関係から恋人へと昇格したのは、ついこの間のことだった。
いまだに信じられない。
今でさえ、夢の話かと思ってしまうほど。
それほど、自分たちは変わってなかった。
縮まったようで平行線な距離。
今だって、こんなに近くにいるのに、彼女には警戒心と言うか、なんていうか、とにかく無防備すぎる。
嬉しくないわけじゃないけど、やっぱり何かが足りない。
今の自分の気持ちを、形にしようとフル回転させる。
そのうち、ふっと浮かんだ言葉。
“もっと意識して欲しい”
見て欲しいんだ、自分を。
紙なんかじゃなく、自分を。
「エド。分かったこれ!あのね、ここが・・・ん!?」
が嬉しそうに目を輝かせて俺を見た瞬間、何かがはじけた。
気づけばオレは、喋っていた彼女を遮るように、唇を重ねていた。
一瞬だけ触れ合ったそれを、妙にゆっくり離す。
離れていくときにちらりと見た彼女の顔は、驚きに固まっていて。
その目は自分を見つめていて。
やっと見てくれた。
オレは、満足げに笑った。
「で?何が分かったって?」
そう言って笑うと、はっと我に返った彼女の顔が、今更のように赤くなった。
「え・・・エド!」
「何だよ?」
「い、今・・・何・・・!?」
「何って・・・キスだろ?」
飄々と応じるオレに困惑しながらも、は頑張って言い募る。
照れ隠しのせいか、怒ったような口調になっている彼女もなかなか可愛い。
「そ、そう言うことを聞いてるんじゃないの!!」
「じゃあ何だよ?」
「何って・・・そ、れは!」
「イヤだったか?」
少しだけ、ほんの少しだけ不安そうに聞くと、うっと彼女がたじろいだ。
「いやじゃ・・・ない・・・けど、ね!でもね!」
「じゃ、問題ないだろ?」
で、何が分かったって?とこつこつと紙を叩くと、それ以上は無駄だと判断したのか、はため息をついてぐったりしてしまった。
そんな反応がいちいち可愛くて、緩む頬を押さえられない。
ほら。とせかすと、はのろのろとこっちを見た。
恨みがましそうにまだ赤みのひかない顔で睨みつける。
それに、いつだったか意地悪そうと彼女に評された笑みで応えた。
「・・・あのね、ここのところに・・・。」
さっきとは微妙に離れた位置から、紙のある部分を指す。
それに相槌を打ちながら、オレはもうひとつの答えにたどり着いた気がしていた。
自分とに足りなかったものを、今、手に入れた気がした。
***
エドが黒くなっちゃった・・・(滝汗)
エドで甘甘。というリクエストだったのですが・・・
沿えているかかなり不安です・・・!
ユキ様、こんなのでよろしければ、どうぞもらってやってください・・・!
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