「っあ〜・・・疲れた〜。」
「やっと着いたね。」
そう言い合いながらホームに降り立ったのは、鋭い金の目と、太陽のような明るい金の髪を持つ平均より誰が見ても低いだろうと言われる少年と、いかつい鎧で全身を包んだ一見成年男子で実は少年というなんともミスマッチな人物、そして、薄い茶色の長い髪と同系色の瞳を持つ3人の中では一番まとも、言い換えればこれといって特徴のない少女と言う、他人が見ればなんともアンバランスな3人組だった。
名をそれぞれエドワード・エルリック、アルフォンス・エルリック、そして・という。
この3人は、賢者の石を求めて旅をしている。
今回も石の情報を求め、この東部の町、シルヴィスにやってきた。
ここは学校教育が盛んで、国中から学問を学びたいものが集まってくるのだ。
当然、書物の量も半端ではない。今回はそれが目当てだ。
「へー・・・思ってたより活気があるのね。」
「お前、どんなイメージ持ってたんだ?」
「え〜?・・・眼鏡かけた人たちが、本を抱えながらもしくは読みながらせこせこと歩いてるイメージ?」
「・・・それどう見ても異常だよ、・・・。」
がっくりと肩を落とす兄弟に、は不満そうな目を向ける。
そう、この少年(?)2人は兄弟なのだ。ちなみに、外見と年は反対に見なければならない。つまり、小さいエドワードが兄で、大きなアルフォンスが弟だ。人は見かけによらないと言う言葉を、身をもって証明してくれてると思う。ちなみにはこの兄弟とは赤の他人だ。ついこの前から旅に同行するようになった。目的が同じと言うことで、団結力がある・・・はずなのだが・・・。
「さーて・・・とりあえずは・・・」
「宿よね!」
「あ?何言ってんだ。図書館の下見だろ?」
「それより前に町の見学しようよ兄さん。」
見事に言っていることがばらばらだった。
はエドワードの言葉に、信じられないと言うような視線を向ける。半眼で睨みつけた。
「ちょっと、私疲れてるんだけど。」
「まだ昼前だろ。いくらなんでも早すぎる。目的は図書館なんだから、先にそっち行くべきだろ。」
「・・・荷物持って?」
「そんなたいした荷物じゃねぇだろ。」
両者一歩も譲らず、互いににらみ合う。そんな2人を、アルフォンスが呆れたような目で見ていた。
「でも、それより何より町の地理を知らなきゃ2人の言ってること出来ないでしょ?今日は街を見て回ろうよ。」
「「・・・・・。」」
もっともな意見に、年長者2人は黙り込む。
そう、このアルフォンスは、みてくれは一番年上のように見えるが、実際は一番下なのだ。ちなみに、現在16歳のを筆頭に、14歳のエドワード、13歳のアルフォンスといった具合になる。この年で親元を離れて旅しているのか?!と時々驚かれるが、3人にはそれぞれ人には簡単に話せない理由があるので、いつも曖昧に笑って誤魔化していた。
は賢者の石の研究をしていた父の後を継ぎ、その研究の果てを見届けるという目的があった。
エドワードとアルフォンスには、過去のあやまちで失った体を元に戻すと言う目的があった。
年端も行かない少年・少女にとっては、過酷すぎる過去を背負い、生きているのだ。
結局、アルフォンスの説得により、今日のところは街の見学と言うことになった。一番年少でも、その言葉には、誰も逆らえないのだ。
***
「ここがメインストリート?」
「うん。そうみたいだね。」
「へ〜・・・人一倍賑やかだね。」
「お。出店まであるぞ。」
「ほんとだ!可愛いこのネックレス。あ、このブローチも可愛い。あ〜!あの店も何か売ってる!」
「おい、!」
落ち着きなくちょこまかと走り回るの襟首をエドワードはなんとか捕まえる。
その反動で首が絞まったのか、「ぐえっ。」という乙女的にはタブーな声をあげ、恨めしそうに後ろにいるエドワードをねめつける。
「ちょっとエドワードさん。苦しいんですが。」
「わりぃ。でも、迷子になるよりかましだろ。」
「ご心配なく。アルがいるもん。アル大きいから目立つし。どっちかって言うと、エドのほうが迷子になる率高いんじゃない?人ごみに押し流されないように精々気をつけてね。」
「んだと、こらぁ!」
フフンと鼻を鳴らしながらわざとらしく見下ろしてくるにエドワードは思わず殴りかかる。が、予想していたのほうが対応が早かった。早々に戦線離脱し、駆け足でアルフォンスの元に戻っていったのだ。行き場のなくなった手を思いっきり握り締め、逃げられた・・・!とエドワードは歯軋りをした。
その様子を少し離れたところから見ていたアルフォンスは相変わらずな2人の会話に、小さくため息を漏らしていた。
***
「アル、ここどこ?」
「え〜っと・・・学校が立ち並ぶエリアかな。」
「へぇ・・・。」
メインストリートを通り抜けた3人は、両脇を白い壁が延々と続く、殺風景な道を歩いていた。
どうやらこの町は学校地区、商店街、住宅街、というように区画分けされているらしい。
今の時刻は昼の2時を回った頃だ。さすがに今は学生は校内で勉学に勤しんでいるのだろう。
今は閑散としているけど、夕方になれば帰宅する学生でこの道も溢れかえるんだろうなぁ・・・とは考えながら道を歩いていた。
だが、そんな静かな空気を、爆音がかき消した。
「な、なんだぁ?!」
「あっちのほうからみたいだ!」
アルフォンスの言うほうを見ると、晴れた青い空に、黒い煙がたなびいている。
「なんだってんだ、いったい!」
「とにかく行って見よう、2人とも!」
「分かってる・・・こっちだ!」
地図を持ったアルフォンスの先導で、3人はにわかに騒がしくなった道を疾走した。
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***
やっちまいましたよ、番外編。
こっそりと言ってしまえば、これは3章になる予定でした。ヒロインが2人の過去を知るまでの話です。大事なところなので、例え番外編でも書いてみたいなって。
出だしは明るいですが、後半は暗くなる予定なので、ご注意。