あれから、親友2人は納得できないような顔をしていたが、「あんたが言うのなら。」と言ってため息をついて微笑んでくれた。
ありがとう。ごめんね。
今日も、いってきます。
***
どこからともなく、かちかちという時計の音が聞こえる。
昨日までは聞こえなかったのに。
そんなに、時の流れに敏感になっているのだろうか。
一定のリズムで進み続ける時間に逆らい、目の前に広げた本はずっと同じページのままだった。
頭の中には昨日のレスタの言葉がリピートされている。
「告白しないの?」
(告白・・・か・・・)
ふう、と、私は何度目かも分からないため息をついた。
2人にはああ言ったけど、私の中では疑問が残っていた。
もう1人の私が言う。
『それでいいの?』
と。
その問いかけに、いいんだと儚く微笑みながら言う私がいる。
このままでいい。
このままがいい。
最初はこんなに近づけるとは思ってなかったんだから。
これ以上を望むなんて、おこがましいにもほどがある。
『ほんとに・・・?』
ほんとよ。
『ほんとにそう思ってるの?』
そうよ。
『じゃあ・・・
なんでそんなに苦しそうなの?』
ぐっと胸が締め付けられたように苦しくなって、思わず片手で胸を押さえた。
『このままを望むのなら、なんでそんなに苦しそうなの?
なんでそんなに泣きそうなの?』
カタカタと体が震える。
『怖いんでしょう?変わってしまうのが、怖いんでしょう?』
怖い・・・怖いよ。
告白して、この関係が壊れてしまうことが怖い。
告白して、振られてしまうのが怖い。
彼との距離が、離れてしまうのが・・・怖い。
未来は不確定で、何が起こるか分からない。
でも、無限に広がる未来にも、ぼんやりと見える道がある。
彼は、きっと最上級に困った顔をするだろう。
多分彼はこういったことに慣れてないだろうから、顔を赤くしてあたふたするのかもしれない。
黙り込んで、うろうろと視線を彷徨わせて、
うつむいて、言いにくそうにためらって、
それでも結局出てくる言葉は、「ごめん」の一言だろう。
不確定の未来でも、時にははっきりと、待ち受けている未来も存在するのだ。
どんな道をたどろうとも、結局行き着く地点が、存在するのだ。
告白しても、彼が私を受け入れることはない。
その後に残るのは、壊れてしまったこれまでの関係と、ギクシャクした雰囲気。
ぎこちない会話。合わされる事のない視線。どこか遠慮した彼の声。
それは、“いつも”が壊れた瞬間。
その衝撃に、きっと私は、耐えられない。
残された時間はもう少ないのに、その間に私はそれだけ傷つくだろう。
私は、もうこれ以上傷つきたくない。
今まで築いてきた関係を、私は壊せない。
私は彼のことが好きです。
だから、前に進むのが怖い。
どうしようもなく、怖いんです。
欲を言えば振り向いて欲しい。ずっとずっとそばにいたい。
でも、あなたの枷にはなりたくないんです。
私の気持ちは、今のあなたには重荷でしかない。
私のわがままで、あなたにそれを背負わせることは出来ない。
私は意気地なしです。
行動力もなければ、勇気もない。
それでも、それなりに、あなたが好きです。
だから私は、このままでいい。
これが、私の思いの形なのですから。
***
月明かりがぼんやりと部屋を照らす。
タイムリミットは、あと2日―――
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